タトゥーアーティストになることを目指す方にとって、最初に直面する疑問は「何から始めればいいのか」ということでしょう。タトゥーアーティストになるためには、専門的な道具の準備から基礎技術の習得まで、学んでいくべきことが数多くあります。
この記事では、タトゥーアーティストになるために必要な道具一式、効果的な練習方法、そして安全で衛生的な作業環境の整え方について詳しく解説します。

タトゥーアーティストになるために揃えておくべき道具
タトゥーアーティストとして活動を始めるためには、まず適切な道具を揃えることが不可欠です。プロフェッショナルな仕事をするためには、品質の高い道具選びが重要になります。
ここでは、タトゥーアーティストが必ず持つべき基本的な道具について、その役割と選び方を詳しく説明していきます。
タトゥーマシンの選び方
タトゥーマシンは、タトゥーアーティストにとって最も重要な道具の一つです。現在主流となっているのは、ロータリータイプとコイル(マグネット)タイプの2種類に分けられます。近年主流になりつつある、ペン型のカートリッジニードルマシンもロータリータイプに分類されます。
初心者の方には、扱いやすく振動が少ないロータリータイプのタトゥーマシンがおすすめです。ロータリータイプは、アウトラインからシェーディングまで幅広い作業に対応できる汎用性の高さが特徴となっています。
一方、コイルタイプは伝統的なタトゥーマシンで、パワフルなライン描きに優れていますが、操作には慣れが必要となります。マシン選びの際は、重量バランス、グリップの握りやすさ、メンテナンスの容易さも重要な判断基準となります。

パワーサプライ(電源供給機器)の選び方種類
パワーサプライは、タトゥーマシンに安定した電力を供給する重要な機器です。電圧の調整機能により、ライナー作業とシェーディング作業で適切なパワーを使い分けることができます。
最近では、ワイヤレスパワーサプライも普及しており、コードの煩わしさを解消できる利点があります。特に長時間の作業や複雑なポジションでの施術において、ワイヤレス機器の自由度は大きなメリットとなります。
クリップコードやRCAコードについても、品質の良いものを選ぶことで接触不良を防ぎ、安定した施術が可能になります。導電性の高い素材を使用した、耐久性のあるクリップコードやRCAコードを選択しましょう。
タトゥーニードルの選び方種類
タトゥーニードルは、作業内容に応じて適切な種類を選択することが重要です。主にライナー用とシェーディング用に分類され、それぞれ異なる特性を持っています。
ライナー用ニードルは、細い線を描くために先端が鋭く設計されており、アウトライン作業に最適です。現在では、カートリッジニードルが主流となっており、交換が簡単で衛生的な作業環境を維持できます。
ニードルの太さや配列によって、表現できるラインの質感や影の濃淡が変わるため、作品に応じた適切な選択が求められます。
タトゥーニードルには様々な種類があり、それぞれの用途に応じて使い分ける必要があります。以下の表で主なニードルの種類と特徴をまとめました。
ニードルタイプ | 主な用途 | 特徴 |
---|---|---|
ラウンドライナー(RL) | アウトライン、細い線 | 先端が円形に配列、鋭い線描き |
ラウンドシェーダー(RS) | シェーディング、ぼかし | 円形配列、柔らかい表現 |
マグナム(MG) | 広範囲のシェーディンやパッキング | 2列配列、効率的な塗りつぶし |
ソフトエッジマグナム(SEM) | グラデーション表現 | カーブ形状、滑らかな仕上がり |
タトゥーアーティストを目指す初心者向けスターティングセット
タトゥーアーティストを目指す方にとって、個別に道具を揃えるのは費用面でも知識面でも負担が大きいものです。そこで活用したいのが、必要な道具が一式セットになったスターティングセットです。
セットに含まれる道具
良質なスターティングセットには、タトゥーマシン、パワーサプライ、各種ニードル、インク、消耗品が含まれています。これらの基本的な道具が揃っていることで、購入後すぐに練習を始めることができます。
セット内容を確認する際は、タトゥーマシンの品質、パワーサプライの機能性、ニードルの種類の豊富さなどをチェックしましょう。また、グリップやチューブ、消毒用品などの消耗品も十分な量が含まれているかを確認することが重要です。
価格だけでなく、アフターサポートの充実度も選択の重要な要素となります。初心者向けの説明書や動画解説、技術サポートが提供されるセットを選ぶことで、スムーズな学習が可能になります。
初心者向けスターティングセットに最低限含まれるべき道具のリストは以下の通りです。
- タトゥーマシン(PEN型マシンなどのロータリータイプ)1〜2本
- パワーサプライ(もしくはワイヤレスタイプ)
- 各種ニードル(ライナー、シェーダー各種)
- 基本インク(黒インク必須、カラー数色)
- 練習用人工皮膚(シリコンスキンなど)
- 転写用品(ステンシルペーパー等)
- 基本的な衛生管理用品
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タトゥーインクの選び方
タトゥーインクは、作品の発色と持続性を決定する重要な要素です。高品質なインクは、鮮やかな発色と長期間の色持ちを実現し、安全性も確保されています。
インクを選ぶ際は、FDA認可や欧州基準に適合した製品を選択することが重要です。世界的な有名ブランドのインクは原則基準を満たしています。安全面も考慮したブランド選びが重要です。また
初心者であれば、まず基本的な黒インクから始めて、技術の向上に合わせて徐々にカラーインクを追加していくことをおすすめします。ライン用やシェーディング用などの濃度の違う数種類がセットになった黒インクのセットがおすすめです。
持っておくべき衛生管理用品
タトゥーアーティストにとって、衛生管理は最も重要な責任の一つです。適切な消毒用品と使い捨て用品を常備することで、感染症のリスクを防ぎ、安全な施術環境を維持できます。
基本的な衛生管理用品には、消毒液、使い捨てグローブ、バリアフィルム、ペーパータオル、マシンのバリア材などが含まれます。ニードルやチューブなどの使い捨て用品は、必ず一回限りの使用とし、適切な医療廃棄物処理を行うことが法的にも倫理的にも求められます。
ビギナータトゥーアーティストの練習方法
道具が揃ったら、次は実際の技術習得に向けた練習が始まります。タトゥーアーティストとしての技術は一朝一夕で身につくものではなく、段階的で継続的な練習が必要です。
ここでは、初心者が効率的に技術を習得できる練習方法とその進め方について詳しく解説します。
練習用素材でのトレーニング
実際の肌に施術する前に、練習用素材での十分な基礎練習が不可欠です。練習用人工皮膚(シリコンスキンなど)などを使用して、マシンの扱い方やニードルの動かし方を習得しましょう。
まずは、人工皮膚を使用して直線や曲線などの基本的なラインの練習から始め、一定の深さと速度で均一なラインを引けるようになることが、すべての技術の基礎となります。次に、円や四角形などの幾何学模様に挑戦し、手首と指先のコントロールを向上させていきます。
ステンシル制作の技術
ステンシル制作は、正確で美しいタトゥーを実現するための重要な技術です。手描きのデザインをステンシル用紙に転写し、肌に正確に配置する技術を習得することで、施術の精度が大幅に向上します。
ステンシル制作では、まずデザインの線の太さや濃淡を適切に調整し、転写時に鮮明に表示されるよう準備します。トレーシングペーパーとカーボン紙を使用した伝統的な方法から、現代的なサーマルプリンターまで、様々な技術を習得しましょう。
段階的な技術向上プログラム
タトゥーアーティストとしての技術向上は、計画的で段階的なアプローチが最も効果的です。基礎技術の習得から応用技術への発展まで、体系的な学習プランを立てることで、確実にスキルアップできます。
各段階で達成すべき具体的な目標を設定し、定期的に自分の作品を評価することが重要です。また、経験豊富なアーティストからのフィードバックを積極的に求め、客観的な視点で技術向上を図りましょう。
技術習得の段階的プログラムは以下の流れで進めることをおすすめします。
- 基礎ライン練習(直線、曲線、円)- 1〜2ヶ月
- 幾何学模様の習得(三角、四角、複合図形)- 2〜3ヶ月
- シェーディング基礎(グラデーション、ぼかし)- 3〜4ヶ月
- 簡単なデザインの完成(文字、シンプルな絵)- 4〜6ヶ月
- 複雑なデザインへの挑戦(リアルな表現)- 6ヶ月以降
タトゥーアーティストに求められる安全性と衛生管理
タトゥーアーティストにとって、技術的なスキルと同じかそれ以上に重要なのが、安全性と衛生管理への理解と実践です。適切な衛生管理は、クライアントの健康を守るだけでなく、アーティスト自身の安全確保にも直結します。
ここでは、プロフェッショナルなタトゥーアーティストが必ず守るべき衛生管理の基本について詳しく説明します。
血液感染症の予防対策
タトゥー施術では血液との接触が避けられないため、血液感染症予防対策は最重要事項です。HIV、B型肝炎、C型肝炎などの感染症リスクを防ぐため、標準予防策の徹底が必要です。
手洗いと手指消毒は、施術前後だけでなく、作業中も必要に応じて実施します。使い捨てグローブは、一つの作業ごとに新しいものに交換し、グローブを外した後は必ず手洗いを行います。
使用済みのニードルやその他の鋭利物は、専用の耐貫通性容器に即座に廃棄し、絶対に再利用をしてはいけません。
器具の滅菌処理方法
金属製のグリップなど再使用可能な器具については、適切な滅菌処理が感染予防の鍵となります。オートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)を使用した滅菌が最も確実で、医療基準に適合した方法です。
滅菌プロセスは、予備洗浄、滅菌処理、無菌的な保管という3段階で構成されます。滅菌インジケーターを使用して、滅菌処理が適切に実施されたことを確認することも重要です。
作業環境の清潔維持
清潔で整理された作業環境は、安全な施術の前提条件です。作業台、椅子、照明器具など、すべての表面を定期的に消毒し、清潔性を維持することが必要です。
施術エリアは、他の活動エリアと明確に分離し、施術以外の用途に使用してはいけません。作業台には防水性のあるバリアカバーを使用し、各クライアント間で新しいものに交換します。

プロのタトゥーアーティストとしてのキャリア構築
基本的な技術と安全管理を習得した後は、プロフェッショナルなタトゥーアーティストとしてのキャリア構築に向けた取り組みが重要になります。継続的な技術向上と専門知識の拡充により、競争力のあるアーティストとして成長していくことができます。
ここでは、キャリア発展のための具体的な方法と専門技術習得の道筋について説明します。
スタジオでの実務経験
実際のタトゥースタジオでの実務経験は、理論と実践を結びつける最も重要な学習機会です。見習いやアシスタントとしてスタジオで働くことで、プロフェッショナルな環境での実践的スキルを身につけることができます。
スタジオでの実務では、顧客対応、カウンセリング、デザイン提案など、技術以外の重要なスキルも同時に習得できます。経験豊富なアーティストの指導の下で、様々なクライアントの要望に応える経験を積むことで、柔軟性と適応力を養うことができます。
ポートフォリオの作成と管理
プロフェッショナルなポートフォリオは、タトゥーアーティストとしての技術レベルと個性を表現する重要なツールです。高品質な作品写真と多様なスタイルの作品により、クライアントや雇用主に対して説得力のあるアピールができます。
ポートフォリオ作成では、適切な照明と角度により、作品の細部やカラーの美しさを正確に表現することが必要です。デジタルポートフォリオとプリント版の両方を準備し、SNSやウェブサイトを活用したオンライン展開も現代では欠かせません。
習得段階 | 期間目安 | 主要技術 |
---|---|---|
基礎練習期間 | 3-6ヶ月 | ライナー技術、基本図形描画 |
応用技術期間 | 6-12ヶ月 | シェーディング、グラデーション |
実践習得期間 | 12-24ヶ月 | カラーワーク、複雑デザイン |
まとめ
タトゥーアーティストになるための道のりは決して簡単ではありませんが、適切な道具の選択と段階的な技術習得を経れば、着実にプロフェッショナルへの道を歩むことができるでしょう。
タトゥーアーティストとしての第一歩を踏み出すために、まずは適切なスターティングセットの選択と基礎練習から始めてみてください。